第90章 二者択一

南坂海乃が身じろぎしようとした、その瞬間。

後頭部に鈍い一撃が落ちてきた。ずん、と脳の芯まで響く痛み。次の瞬間、視界が真っ黒に塗り潰され、彼女はその場に崩れ落ちた。

再び意識が浮上したとき、目元には布が巻かれ、両手は椅子の背にきつく逆手で縛り上げられていた。手首をわずかに動かしただけで、縄が肉に食い込み、ひりつくように痛む。

遠くで、江川徹哉と誰かが言い争っている声が聞こえた。

「約束しただろ! 彼女には手を出さないって!」

別の声。明らかにボイスチェンジャーを通した機械音だ。

「お前が騙して連れて来た。もう同じ船の上だ。いまさら逃げられると思うな」

「違う! お前らが俺の将来...

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